第7回

問題解決

問題が表に出たとき、誰かを原因にして終わらず、何が起き、どの条件が重なり、何を変えれば再発しにくくなるかを考えます。

第1〜11回事前復習版|人ではなく、事実と仕組みに矢印を向ける

問題解決は、事実から複数の原因候補を捉え、対策と検証を一つの筋道でつなぐこと。

この章でできるようになること

  • 観察した事実と、推測・評価・感情を分けて記述できる
  • 5 WhysとM-SHELLを使い、個人だけで閉じない原因候補を整理できる
  • 対策を安全性・実行可能性・検証方法まで含めて設計できる

図でつかむ

人を原因にせず、事実から再発防止へ進む

原因を一つに決めつけず、複数の条件を確認し、対策が効いたかまで確かめます。

1事実いつ・どこで・何が起きた
25 Whys確認できる原因候補を探す
3M-SHELL条件の抜けを広く見る
4対策と検証担当・指標・見直し時点
S 手順H 道具E 環境L 人と連携M 管理・運用

分析の出口:原因候補と対応した対策を置き、安全性・効果・副作用を見直します。

3分復習

3分で思い出す

1

事実に戻る

誰が悪いかを急がず、いつ・どこで・何が起き、何が確認済みかをそろえる。

2

条件を広く見る

手順、道具、環境、人と連携、管理・運用のどこに隙間があったかを見る。

3

試して確かめる

対策を置いて終わらず、指標、担当、確認時点を決めて効果と副作用を見直す。

本編

本編

01

問題を、人の欠点ではなく複数条件の重なりとして見る

一件の出来事の背後には、手順・道具・環境・連携など複数の防御の隙間が重なることがあります。

スイスチーズモデルは、事故やミスを一人の失敗だけで説明せず、複数の防御層にどんな隙間があり、それらがどう重なったかを見る補助線です。目的は責任を消すことではなく、次に同じ条件がそろっても防げる場所を増やすことです。

最初に人を責めると、推測が事実に混じり、報告が遅れ、改善できる条件を見落とします。まず現在の安全を確保し、正規の報告・事故対応手順を優先してから、学習のための分析を行います。

個人で閉じる

注意力、性格、経験不足だけで説明し、注意や再教育だけで終える。

仕組みまで見る

本人の行動と同時に、手順、道具、環境、連携、管理条件を確認する。

責任も扱う

行動の選択と基準を事実に基づいて確認し、必要な是正と仕組み改善を分けて行う。

02

5 Whysは回数ではなく、確認できる原因候補へ近づくために使う

『なぜ』を機械的に繰り返すのではなく、各段階の仮説を現場・記録・データで確かめます。

分析は『何が起きたか』という事実から始めます。『本人が慌てていた』『やる気がない』は、確認できていなければ事実ではなく仮説です。仮説には仮説と印をつけ、必要な確認を決めます。

5回で真因が一つ見つかるとは限りません。複数の因果経路があり得るため、分岐を残し、行き止まりは未確認の前提として記録します。分析の目的は、もっともらしい物語を作ることではなく、変えられる条件を見つけることです。

  • 事実:第三者が確認できる情報
  • 仮説:なぜ起きたかの候補
  • 確認:仮説を支持・否定する情報
  • 変更可能性:管理者やチームが変えられる条件

03

M-SHELLで、原因候補の抜けを減らす

S・H・E・L・Mは、人に集まりがちな原因を複数の領域へ広げる観察レンズです。

Sは手順・規定、Hは設備・道具、Eは環境・時間条件、Lは本人と周囲の連携、Mは制度・配置・教育・監督・資源・文化など管理運用です。分類自体が答えではなく、要素どうしの噛み合わせを確認します。

最後にMを見るのは、すべてを管理者の責任にするためではありません。現場だけでは変えにくい条件を、管理者が扱える制度・資源・運用の問いへ引き上げるためです。

  • S:手順・規定・記録様式
  • H:設備・道具・表示
  • E:環境・時間・負荷
  • L:本人・同僚・連携
  • M:管理・配置・教育・資源・文化

04

事実→分析→対策→検証を一つの線にする

対策は分析した条件へ対応させ、効果と副作用を確かめられる形にします。

注意喚起や研修が必要な場合もありますが、それだけでは記憶や集中力に依存します。手順の簡素化、配置変更、見分けやすい表示、役割・相談条件の明確化など、原因候補へ直接働く対策を組み合わせます。

自動化や強制機能が常に最善とは限りません。新たな危険、現場の判断を奪う副作用、費用、アクセシビリティ、法令・専門判断との整合を確認し、小さく試して見直します。

深掘り

もう一段深く考える

Just Cultureは、何でも責めないことではない

意図しないエラー、リスクを過小評価した行動、意図的な違反では、必要な対応が異なります。ただし研修だけで人事・懲戒判断を確定せず、事実、既知のリスク、選択可能性、法人の正規手続に基づいて扱います。

『強い対策』は、強制力の強さだけでは決まらない

人の注意に頼らない設計は有効ですが、強制機能が例外対応を妨げる場合もあります。安全効果、実行可能性、副作用、現場の判断余地を比較して選びます。

分析は、本人を外すことでも管理者だけを責めることでもない

本人の行動、判断、支援ニーズも事実として扱います。同時に、同じ人でなくても起き得る条件を探し、個人への対応とシステム改善を両方決めます。

事例

転倒事例(インシデント)を、推測で分析しない

状況

共用通路で人が転倒した。必要な初動と正規の報告を行った後に確認すると、直前は照明が暗く、移動物品が通路近くにあり、巡回記録の一部が未確認だった。転倒理由はまだ確定していない。

避けたい捉え方

本人が慌てていたことが原因だ。もっと注意するよう厳しく伝える。

状態としての観察

転倒したこと、確認時の環境、記録の状態は事実として分けられる。一方で、本人の行動、照明、物品、巡回のどれがどう影響したかは、追加確認が必要な仮説である。

再現できる次の一手

まず安全確保と正規の事故対応を完了し、現場・記録・関係者の情報を保全する。事実と仮説を分け、M-SHELLで条件の重なりを整理する。通路状態の確認方法など変更可能な対策を選び、再発兆候と新たな負担を決めた時点で検証する。

考える問い

  • 確認済みの事実と、まだ仮説のことは何か
  • 人以外の防御層にはどんな隙間があり得るか
  • 対策の効果と副作用を何で確かめるか

現在地チェック

自分の現在地を確認する

分析の詳しさではなく、事実・原因候補・対策・検証がつながっているかを見ます。

次に試す:一件の記述を『確認済み/仮説/未確認』に分ける。

次に試す:S・H・E・L・Mから一つずつ問いを出す。

次に試す:各対策の横に『どの条件を変えるか』を書く。

次に試す:対策で新たに困る人・場面・例外を一つ挙げる。

次に試す:試行後に見る行動または状態を一つ決める。

チェック状態は保存・送信されません。印刷して振り返ることもできます。

次回へのつながり

問題は一つではない。次は、何から扱うか

原因候補と対策案が見えると、複数の課題が並びます。第8回では、事実と共通の判断軸で候補を比べ、今やる・保留・見送るを説明できる形にします。

第8回 意思決定と優先順位へ

出典確認用ID:MGT-07-A