第5回

フィードバックと対話

『ちゃんとして』『頑張って』を、相手が次に使える具体的な情報へ変えます。承認も是正も、人格ではなく行動を扱います。

第1〜11回事前復習版|評価ではなく、再現と改善の情報を渡す

フィードバックは人の価値を決めるものではなく、観察した行動と影響を共有し、次の一歩を一緒に決める対話。

この章でできるようになること

  • SBIを使い、評価語を観察可能な行動と影響へ言い換えられる
  • 難しい是正対話でDESCを使い、必要な基準と相手の事情を両方扱える
  • 対話を一度で終わらせず、次の行動と確認日まで合意できる

図でつかむ

評価ではなく、次の行動に使える情報を渡す

SBIで観察情報をそろえ、相手の見立てを聞き、次の行動と確認日まで結びます。

S場面いつ・どこで
B行動何を見聞きしたか
I影響何が起きた・懸念されるか
?相手の見立て本人には何が見えていたか
✓合意次の行動・支援・確認日

フィードバックの出口:「伝えた」で終わらず、次の一回を一緒に設計します。

3分復習

3分で思い出す

1

事実を置く

いつ・どこで、どの行動を見聞きしたかを、評価語を使わず伝える。

2

影響を結ぶ

その行動が、相手・チーム・仕事へどんな影響を与えたかを具体化する。

3

聞いて決める

一方的に結論を押しつけず、相手の見立てを聞き、次の行動と確認日を決める。

本編

本編

01

フィードバックは、仕組みを現場に合わせる循環

手順を守らせる注意ではなく、何が機能し、どこで詰まったかを学ぶ情報交換です。

仕組みを導入しても、現場では想定外が起きます。できた行動を具体的に認めると再現しやすくなり、できなかった条件を確かめると仕組みを直せます。

フィードバックを個人評価だけに使うと、問題は隠れます。行動と同時に、手順、情報、負荷、道具、役割に改善余地がないかを確認します。

評価

『良い・悪い』『しっかり・雑』で人を分類する。

フィードバック

観察した行動と影響を、次の行動に使える形で返す。

対話

本人が見ていた状況も聞き、行動と仕組みの両方を更新する。

02

SBIで、評価語を観察情報へ変える

Situation・Behavior・Impactで、場面、行動、影響を分けます。

Situationでは場面を特定し、Behaviorでは第三者にも確認できる行動を述べます。Impactでは、結果や周囲への影響を共有します。推測は事実と分け、『私はこう受け取った』と確認可能な形にします。

SBIは是正だけの道具ではありません。良い行動の手順と影響を伝えると、本人とチームが何を再現すればよいか分かります。

  • S:どの場面か
  • B:どんな行動を観察したか
  • I:どんな影響があった、または懸念されるか
  • 確認:本人はどう見ていたか

03

DESCで、基準と関係性を両立する

事実を描写し、自分の懸念を伝え、具体策を提案し、相手と方法を選びます。

難しい是正場面では、SBIの事実を出発点に、なぜ重要かを『私は心配している』『この基準を守る必要がある』と明確にします。次に実行可能な提案を置き、相手の事情と別案を聞きます。

相手に選択肢を渡すことは、必須基準を曖昧にすることではありません。守る条件は明確にし、その実現方法を一緒に考えます。伝えた後に一拍置き、相手が考えて話す時間を確保します。

  • D:観察できる事実
  • E:影響・懸念・守る基準
  • S:具体的で実行可能な提案
  • C:相手の見立てと代替案を聞く

04

対話を、次の行動と振り返りへつなぐ

一度の会話で変化を求めず、小さな行動、支援、確認日を決めます。

短い1対1の面談(1on1)でも、最初に相手の気がかりを聞き、事実を確認し、次の行動を合意し、確認日を決めれば、継続的な学習の場になります。

記録は必要最小限にし、目的、アクセスできる人、保管期間など法人ルールに従います。個人的な感情や不要な機微情報を、便利だからという理由だけで共有場所へ残しません。

  • 相手の見立てを聞く
  • 次に試す行動を一つ決める
  • 管理者が提供する支援を決める
  • 確認日と判断基準を決める

深掘り

もう一段深く考える

SBIは『注意するための証拠集め』ではない

問題行動だけを探すと、監視されている感覚が強まり、報告や挑戦が減ります。良い行動も具体的に扱い、仕組みの改善情報も集めることで、学習の循環になります。

Impactには推測が混じりやすい

『本人が不安になった』と断定できない場合は、『私は不安につながる可能性を心配している』と述べ、本人や関係者に確認します。観察事実と見立てを混ぜません。

対話の記録は、多いほどよいわけではない

記録は次の行動と継続確認に必要な範囲へ絞ります。個人情報・人事情報・ケア情報を扱う場合は、このハンドブックへ入力せず、法人が定める正規の記録先・権限・保存ルールを使います。

事例

『もっとちゃんと確認して』では変わらない

状況

共通手順を導入したが、完了欄の記入漏れが続いた。管理者はその都度『次から気をつけて』と伝え、本人は謝っている。

避けたい捉え方

何度言っても直らない。意識と責任感の問題だ。

状態としての観察

どの場面の、どの行動が未実施だったか、何に影響するか、漏れた条件は何かが共有されていない。次に試す方法と確認日もない。

再現できる次の一手

SBIで一件の場面・未実施行動・影響を伝え、本人が見ていた状況を聞く。手順の位置やタイミングも見直し、次の一回で試す方法と確認日を合意する。

考える問い

  • 評価語を使わず、どの行動を伝えられるか
  • 本人に聞かなければ分からない条件は何か
  • 行動の変更と、仕組みの修正をどう分けるか

現在地チェック

自分の現在地を確認する

伝えた回数ではなく、相手が次に何をすればよいか分かり、管理者も学べたかを見ます。

次に試す:次の一件をS・B・Iの三行で準備する。

次に試す:結果だけでなく、手順や工夫を一つ言葉にする。

次に試す:提案の後に相手の見立てを聞く一問を置く。

次に試す:会話の最後に『いつ確認するか』を合意する。

次に試す:記録目的と閲覧範囲を確認する。

チェック状態は保存・送信されません。印刷して振り返ることもできます。

次回へのつながり

本音を言えない環境では、型も機能しない

SBIやDESCが正しくても、話した人が責められる、失敗を隠した方が安全だと感じる環境では情報が上がりません。第6回では、問題を早く言い、学びと責任につなげる条件を扱います。

第6回 心理的安全性へ

出典確認用ID:MGT-05-A / MGT-05-B / MGT-05-C