第3回

ふるまい

リーダーは、話しているときだけメッセージを発しているのではありません。視線、表情、声、姿勢、沈黙もチームの環境をつくります。

第1〜11回事前復習版|内面の意図を、相手に届く行動へ

リーダーの言葉・表情・声・姿勢の一致が、チームの安心と信頼をつくる。

この章でできるようになること

  • 言葉と非言語の不一致が、相手に与える影響を観察できる
  • 視線・表情・声・姿勢を、場面の目的に合わせて選べる
  • PREPとDESCを使い分け、明確さと関係性を両立できる

図でつかむ

伝える目的に合わせて、二つの型を選ぶ

要点を明確に伝える場面と、影響や関係性を扱う場面では、会話の組み立て方が異なります。

PREP|要点を明確に

結論
理由
具体例
結論

DESC|基準と関係性を両立

事実
影響
提案
対話

共通点:型を読み上げるのではなく、相手の反応を聴きながら使います。

3分復習

3分で思い出す

1

一致させる

『話を聴く』と言うなら、手を止め、体と視線も相手へ向ける。

2

観察する

良い・悪いではなく、見えた動作、聞こえた声、受けた印象を分ける。

3

道具を選ぶ

情報を短く伝えるならPREP、感情や関係性に配慮するならDESCを軸にする。

本編

本編

01

信頼は、言葉とふるまいの一致から生まれる

相手は言葉だけでなく、実際に向けられた注意と行動から、優先順位を受け取ります。

『いつでも相談して』と言いながら、画面を見たまま返事をすると、相手には『今は話しかけないで』と届くことがあります。意図が善意でも、受け取られた影響との間には差が生まれます。

一致とは、いつも笑顔でいることではありません。難しい内容なら真剣な表情、緊急時なら明確な声など、状況と伝えたい内容に合うふるまいを選ぶことです。

言葉

何を伝えるか。

ふるまい

どこへ注意を向け、どんな状態で伝えるか。

一致

言葉とふるまいが、同じ目的を示しているか。

02

存在感をつくる4つの観察点

視線・表情・声・姿勢は、性格ではなく、観察して調整できる行動です。

視線は注意の向き、表情は状況への構え、声は落ち着きや緊急度、姿勢は対話への開き方を伝えます。大切なのは、型どおりに演技することではなく、相手と目的に注意を向けることです。

観察するときは『感じが悪い』で終わらせません。『説明中に画面を見続けた』『語尾が速くなった』『腕を組んだ』のように、変えられる動作として記録します。

  • 視線:注意をどこへ向けているか
  • 表情:内容と合っているか
  • 声:大きさ・速さ・間は適切か
  • 姿勢:相手に開かれているか

03

PREP:情報を明確に伝える

結論、理由、具体例、再結論の順で、相手が判断しやすい形にします。

報告、提案、業務指示など、まず要点を共有したい場面に向いています。結論を先に伝えることで、聞き手は何を理解・判断すればよいかをつかめます。

PREPは相手を押し切るための型ではありません。根拠と具体例を示し、検討可能な情報にするための構造です。

  • Point:結論
  • Reason:その理由
  • Example:観察した具体例
  • Point:依頼・提案をもう一度明確にする

04

DESC:必要なことを、関係を壊さず伝える

事実、自分への影響、具体的な提案、相手との選択の順で対話します。

改善フィードバック、断り、対立など、内容と同時に関係性への配慮が必要な場面に向いています。『いつも』『ちゃんと』と評価する代わりに、確認できる事実から始めます。

提案は命令で終わらせず、相手の事情や別案を聞きます。ただし、安全や法令など譲れない条件は曖昧にせず、その範囲を明確に伝えます。

  • Describe:確認できる事実
  • Express:自分が受けた影響や懸念
  • Specify:実行可能な提案
  • Choose:相手の意見を聞き、方法を選ぶ

深掘り

もう一段深く考える

非言語を万能な法則にしない

表情や姿勢だけで相手の本心を決めつけることはできません。非言語は、言葉と状況を含めて確認する観察情報です。違和感があれば『そう見えた』と伝え、本人に確かめます。

PREPとDESCは、会話を固定する台本ではない

型は、必要な要素を落とさないための補助線です。相手の反応を無視して順番を読み上げるものではありません。伝えた後に聴き、事実が変われば考え直します。

ふるまいだけで解決できない問題がある

個人の伝え方を整えても、役割や手順が曖昧なら同じ問題は戻ります。第4回では、良いふるまいを個人技で終わらせず、チームの仕組みへ変えます。

事例

記録漏れを伝える

状況

同じ確認欄の記入漏れが複数回見つかった。管理者は忙しい時間帯に本人を呼び止め、画面を見たまま『ちゃんとして』と伝えた。本人は謝ったが、翌週も漏れが起きた。

避けたい捉え方

何度言っても直らない。責任感の問題だ。

状態としての観察

『ちゃんとして』には、対象・期限・完了条件がない。管理者の視線と姿勢も対話より作業を優先する印象を与え、漏れが起きる条件や代替案を確認していない。

再現できる次の一手

落ち着いて話せる時間を取り、事実を一件示す。漏れによる懸念を伝え、確認時刻やチェック方法を提案する。本人から起きやすい条件と別案を聞き、次回確認日を決める。

考える問い

  • 言葉とふるまいは、同じメッセージを伝えていたか
  • PREPとDESCのどちらを軸にするとよいか
  • 個人の行動と、仕組みとして整えることは何か

現在地チェック

自分の現在地を確認する

うまく見せられたかではなく、意図と影響を一致させられたかを振り返ります。

次に試す:次の相談で、最初の30秒だけ作業を止める。

次に試す:『感じが悪い』を、見えた動作と自分への影響に言い換える。

次に試す:次の報告を、結論・理由・例・依頼の4行で準備する。

次に試す:提案の後に『他にやりやすい方法はありますか』と聞く。

次に試す:場面・行動・目的・振り返り日を一文にする。

チェック状態は保存・送信されません。印刷して振り返ることもできます。

次回へのつながり

個人の良いふるまいを、チームの仕組みへ

一人のリーダーが意識し続けるだけでは、忙しさや交代で実践が途切れます。第4回では、役割、手順、確認方法をそろえ、良い実践を誰でも再現できる状態へ変えます。

第4回 チーム基盤と仕組み化へ

出典確認用ID:MGT-03-A / MGT-03-B